連載もこれで最終回です。朝の一手からAIにデータごと渡す話まで、いろいろ書いてきました。最後は、すべての土台になる話です。
どんなに良い仕組みを作っても、データが消えたら終わりです。そして、データが消えた経験は、想像以上に尾を引きます。
社長
蔵人
またやってもうた
私はADHD気味の自営業者です。頭の中だけでは覚えていられないから、ツールに記録を「外付け」しています。だからこそ、その外付け先が飛ぶのは、致命的です。
過去に何度か、データの消失を経験しました。
- ブラウザのデータを消したら、ツールの中身ごと消えた
- アプリのアップデートで、それまでの記録が初期化された
- 「どこに保存されているか」が分からないまま使っていて、ある日全部なくなった
その瞬間に失うのは、データだけではありません。「このツールは信用できる」という感覚ごと失います。一度それを失うと、次にどんな良いツールが来ても「どうせまた消える」と身構えてしまい、本気で使えなくなる。
なぜ「消失」がこんなにこたえるのか
先に、いちばん言いたいことを書きます。これは心配性だからではありません。
ADHDの人にとって、記録は「頭の外に置いた記憶」です。覚えていられないことを、ツールに肩代わりさせている。だから記録の消失は、定型発達の人が感じる「データが消えて不便」よりも、ずっと深い。自分の記憶の一部が消えるのに近い感覚です。トラウマになるのも当然です。
つまり、ツールを信じて使い続けるために本当に必要なのは、便利な機能よりも先に、「このデータは絶対に飛ばない」という安心でした。
大事なのは「自分が読める形で、自分の手元に持つ」こと
消失への答えは、突き詰めると一つです。自分のデータを、自分が読める形で、自分の手元に置いておくこと。
どこか分からない場所に預けっぱなしにすると、消えたときに手も足も出ません。逆に、データが「人間が読んでも意味の分かる形」で手元にあれば、最悪アプリが壊れても、中身そのものは残ります。ファイルとして書き出して、複製しておけるなら、なお安心です。
もしお使いのツールがブラウザの中だけに保存しているなら、こまめに「書き出し(エクスポート)」をして、別の場所に控えておくだけでも、絶望の確率はぐっと下がります。これはADHDかどうかに関係なく、全員にすすめたい習慣です。
「消えない場所」へ育てる
そして、もう一歩進めたい人へ。いまは、AI(Claude CodeのようなコーディングAI)に頼めば、ブラウザ保存のデータをパソコン上のファイルとして書き出し、自動でバックアップを取る仕組みを、自分で作れる時代です。コードが書けなくても、頼めば作ってくれます。
このアプリは今、データをブラウザの保存領域(localStorage)に持っています。
データの消失が怖いので、消えにくい形に育てたいです。
お願いしたいこと:
1. 今のデータを、パソコン上のJSONファイルとして書き出せるようにする。
2. 保存のたびに、直近のデータを別フォルダ(例: .backups)に退避する。
3. できれば、そのフォルダをgitで管理して履歴を残せるようにする。
私はコードが苦手なので、何をするファイルなのかを一言ずつ説明しながら、
元に戻せる形で少しずつ進めてください。こうして、データの置き場所を「ブラウザの中」から「自分が触れるファイル」へ移していく。人間が読んでも意味が分かる形で残し、複製や履歴も残るようにする。そこまで来ると、「全部消えた朝」は、ほぼ来なくなります。
社長
蔵人
アプリの設計でも、ここを土台にした
連載でずっと紹介してきた、自分用の案件管理アプリ pm-app。配布できるスターター版は、まずは手軽に始められるよう、データをブラウザに保存する形にしています。だからこそ、上に書いた「書き出して控える」習慣は、最初にお伝えしておきたいことです。
その上で、このアプリは「AIが読み書きできるデータ置き場に徹する」という考え方で作っています。だから、Claude CodeのようなAIと一緒に、データをファイル保存・git管理へと「育てて」いけます。最初から完璧に消えない、ではなく、自分の手で消えない場所へ育てられる——そういう設計です。
この pm-app は、いまスターター版として配布できる形に準備中です。整い次第、このブログでもお知らせします。
まとめ(連載のおわりに)
データが消えるのを恐れるのは、あなたが心配性だからではありません。記録という「外付けの記憶」を、本気で頼りにしているからです。その不安は、正しい。
必要なのは、消えないことを祈ることではなく、データを「自分が読める形で、自分の手元に」置くこと。まずはこまめな書き出しから、そして余裕があれば、消えない場所へ少しずつ育てていきましょう。
全7回、おつきあいありがとうございました。続けるのが苦手でも、続けられる仕組みは作れます。あなたがダメなのではなく、道具の側が、あなたに合っていなかっただけです。